射水商工会議所について

ごあいさつ

 わが国の人口は平成20年をピークに減少に転じ、それより一足早く射水市は平成17年を境に減少局面に入った。恐らく、今後も人口減少は加速するとみられ、とりわけ地方においては人口動態上の氷河期を迎えている。人口減少が地域経済に及ぼす影響は、一言でいうならば「数を頼む」ことができないことだ。人口という数が減る以上、経営において売上を確保するためには単価を上げる以外にすべはなく、いわゆる付加価値を創出するしかない。これは地域経済においても同様で、数を追うのではなく、質を高めることに注力すべきであることを示唆している。

 では、いかにして付加価値を生み出すか。一つのヒントを与えてくれたのが 10月1日の放生津曳山まつりだ。曳山につながる人々と観る人々、その双方を包み込む独特の空気は、祭り以外ではなかなか感じることのない一体感を生んでいる。人と人とがつながることでコミュニティが形成され、お互いが共感し、信頼し合うことで上質な人間関係が構築されるのだ。この上質な人間関係が担保されたコミュニティは、上質な価値を有することとなり、県外はもとより海外からも「人・物・金」を集める力を持つ。

 昨今のSNSの急速な浸透により、いつでもどこでも人々が簡単につながることができる世の中であるからこそ、人々は顔のみえる人間関係の構築を求めている。むしろ、バーチャルな世界が身近になればなるほど、人々は祭りのようなリアルな世界に価値を見出していくのかもしれない。思いやりにより共感し、信頼し合える人間関係がベースになければ、コミュニティの上質感を醸成することはできないだろう。第24期より安岡定子先生による「いみず塾」を通して論語に親しんできたのは、他者への思いやりである「恕」が通底しているからだ。

 経営においても、地域経済においても、「『上質』をめざす」ことが付加価値を生む土壌となることは明らかなのである。

 「創造」を軸に、前期まで取り組んできた事業に一段落をつけ、長く続けてきた「魅力発信プロジェクト」や「新湊曳山まつり市民プロジェクト」も区切りとした。というのも、人口減少が加速するなか、地域に付加価値を創出する新機軸の必要性を感じていたからで、第27期は「上質」という軸をもって会議所の舵取りを担うこととしたい。また前期より、県内の会議所では初の日本商工会議所総合政策委員会の委員に選任され、さらに知見を広げる機会に恵まれた。新たな人脈と経験の中で得られる気づきを活かしたい。

 いずれにせよ6期目を迎えてしまった現実のなかで、堯王の足下にも及ばないが、前期以上に「寿(いのちなが)ければ則ち辱(はじ)多し 徳を養う所以(ゆえん)にあらざるなり」(荘子)との思いは強く、多少なりとも徳が身につくよう、全身全霊をかけて精進するのみだ。

*訳 「長生きすると恥をかくことも多くなるので、(恥をかくことを恐れると、世俗に縛られることになり)徳を養うことができなくなる。」

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