射水商工会議所について

ごあいさつ

第26期も射水商工会議所の舵取りを担わせていただくこととなった。5期目ともなれば、もとより堯王の足下に及ぶべくもないが、「寿(いのちなが)ければ則ち辱多し 徳を養う所以にあらざるなり」といった心境である。

米国に追随していたわが国GDPの伸びが平成7年を境に止まった。政府は世界第2位であることを盛んにアピールしていたが、この年から差は開いていったのである。そして平成22年には中国に抜かれて3位となり、今では4位の独国と拮抗するところにまでなっている。平成7年はPC向けのOS「Windows95」が発売され、インターネット接続が簡単になり誰でも手軽に利用することができるようになった年なのだ。

ここからGAFAを筆頭にインターネット関連産業が米国の経済成長を牽引し、現在も成長し続けている。一方でわが国はこの情報革命の流れに乗ること、否、この流れを掴むことすらできず、昭和の成功にしがみつくことに固執し、残念ながら経済成長の機会を逸してしまったのだ。加えて、一人あたりの生産性も平成13年頃から欧米はじめ主要国では急速に伸びているのだが、わが国では今日まで低水準で推移している。これは主要国と比してイノベーションが起きなかったということであり、これが失われた20年や30年と呼ばれる所以であろう。

情報革命は社会にFREEでFLATでFAIRでGLOBALな場を創出したが、これにより社会の価値観が「物」から「事」へ、さらには「心」へと変わることとなった。インターネットでいとも簡単に個人が社会と繫がることができるようになり、良くも悪くも個人の「心」が直接、社会へ影響を及ぼす時代になってしまったのだ。そうなると生活環境や労働環境ひいては経営環境においてもイノベーションを求める動きが起き上がってくることは必然であり、シリコンバレーを例に取るまでもなく、新たな付加価値を創造できなければ経済成長を担保できないこととなってしまった。全世界がまさに「創造」の時代に否が応でも突入させられてしまったのである。

加えて、昨今はコロナ禍によりオンラインというコミュニケーション手段が確立され、誰もが画面上で均等の大きさで割り付けられることとなった。そのため、リアル空間でのヒエラルキーが有意性を発揮できなくなってしまったことで社会構造がタテからヨコに変わり、より個人に重きが置かれ新たな付加価値の切り口がさらに多様化したと感じている。

射水市は平成17年に誕生したが、現実的に合併当初に描いた夢のような構想とは程遠い観があり、文字通り人の夢は儚いものだと痛感している。少子・高齢化に伴う生産年齢人口の減少が直接的原因だが、地域の活性化は地域経済の成長と同義であり、経済団体が役割を十分に果たせていないことも関係している。当会議所と射水市商工会は当市全域を俯瞰できる立場で射水市商工協議会を結成し地域の活性化をめざしているが、当会議所だけが前のめりになっている現状で思うように進んではいない。しかしながら、合併した以上は旧新湊市とか旧射水郡など関係なく役割を果たさなければならないのだ。きらりカンパニー顕彰や産学官金交流だけでなく当市全域の経済成長の実現に向け近未来構想を策定するなど、かなり障壁は高いがこれまで以上に傾注して取り組みたい。

生産年齢人口の減少については、出生数を増やすことで長期的に少子化を解消するしかないだろう。そのためには20代前半の女性、つまりは就職期に遭遇する女性の市外や県外への転出を食い止めなければならない。要は結婚適齢期の女性のいないことが少子化の本質であり、子育て支援をいくら手厚くしても出産したい女性が地元地域に残っていなければ無意味なのである。すなわち、就職期の女性が正規雇用で働きたいと思う労働環境や機会を整えることが急務であり、つぎの段階において共働きで子育てしながらも女性が活躍できるようにしなければならないのだ。射水市雇用対策推進協議会の事務局を預かっているので、就職希望者への支援も然る事ながら20代前半の女性が地元地域に残ってもらえるよう、雇用する側への啓発に取り組みたい。

「創造」の時代においてイノベーションを牽引するのは、事業を創造する、つまりは創業することに他ならない。もちろん、既存企業において新規事業を展開することも含んでいる。アフター・コロナやビヨンド・コロナを見据え第25期より創業塾を始めたが、創業を支援することは当会議所ひいては射水市商工協議会が最優先で取り組むべきことだと認識している。これまで以上に充実した内容で行政とも緊密に連携し取り組みたい。併せて、既存企業のイノベーションを後押しするために、部会等の有意義で精度の高い提言・要望の取り纏めに期待するところであり、さらに活発な活動ができるよう取り組みたい。

加えて、事業経営の根幹となる先人の哲学、思想などを正しく学ぶ機会として、平成27年より始めたいみず塾も引き続き開催したい。余談だが、商工会議所ゆかりの渋澤榮一翁の著述を大正5年に纏めた「論語と算盤」が、今なお経営者のバイブルとして愛読されていることは、事業を正しく経営する上で論語がいかに真理を説いているかという証左ではないだろうか。

当市新湊地区には先人達が大切に育んできた歴史や文化があり、それらをさらに磨き上げ後世に伝えていくことは関係人口の増加を誘発し、ひいては経済成長に繋がることとなる。既に7冊発刊した「新湊歴史ヒストリア」はその役割を十分担っているので継続して取り組みたい。

令和3年に国指定重要無形民俗文化財となった放生津八幡宮祭の曳山・築山行事も大切な資源であり、引き続き関係団体や組織とプロジェクトチームを構成し支援したい。加えて、行政より期待されている新湊地区まちづくり協議会についても、クロスベイ新湊を核に内川周辺や東西ベイエリアを一体とした活性化策の企画や推進に向け、中心的な役割を担えるよう体制を再構築し取り組みたい。また、コロナ禍で一時中断を余儀なくされたが、姉妹会議所である仁川商工会議所や友好会議所である千曲商工会議所とも関係人口増加の突破口として以前にも増して交流を深めたい。

第22期「『創造』の時代を生き抜く」、第23期「『創造』の時代を切り開く」、第24期「『創造』の時代を駆け抜ける」、第25期「『創造』の時代を極める」と過去の所信においても意識してきたが、「創造」の時代をさらに極めていくため、イノベーションが起き上がるよう当会議所が果たさなければならない役割は限りなく大きいと認識している。会員諸兄、職員と共に4期12年の経験を活かし全身全霊をかけて期待に応える覚悟である。

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